研究概要 |
方法】病床数500以上、あるいは基幹病院と考えられる麻酔科認定病院を対象として、2006年の1年間に手術室で実施された異型適合血輸血に関して、アンケートによる実態調査を行った。384施設中247施設から回答があり、異型適合血輸血は32施設(12.6%)、から112症例が報告された。この内、症例の背景ならびに輸血の詳細に関して回答のあった105症例(26施設)について解析を行った。 結果】105症例の平均出血量は6,400ml、各血液製剤の平均輸血量は赤血球濃厚液(RCC)24単位、新鮮凍結血漿(FFP)24単位、血小板濃厚液(PC)27単位、術後30日以内の死亡率23%であった。異型適合血輸血の内容は以下の通りであった。RCC23症例、232単位(1症例平均10単位;FFP10症例、162単位(1症例平均16単位);PC83症例、1,679単位(1症例平均20単位)。異型適合血としてRCCのみ輸血された21症例とPCのみ輸血された80症例の比較では、5,000ml以上の大量出血症例が占める割合74対40%、心臓マッサージ施行症例が占める割合24対5%、術後30日以内に死亡の転帰を辿った症例の割合57対11%となっていた。FFPならびにPCの異型適合血輸血を実施された症例の各々1、9症例にはABO不適合輸血が実施されていたが、これらの症例を含めて異型適合血輸血に起因する溶血反応は報告されなかった(1症例は無回答)。 結論】異型適合血輸血は日常的に入手困難なPCにおいてもっぱら実施されており、RCCの異型適合血輸血の詳細が報告されたのは僅か23症例であった。異型適合血輸血が実施された105症例において、輸血に伴う溶血反応は報告されず、適切な異型適合血輸血による免疫反応の発生率はそれ程高くないものと推測された。
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