研究概要 |
頚動脈小体(CB)の形態および機能的個体差が低酸素性呼吸応答(HVR)の遺伝的個体差に強く関与していることをこれまでに明らかにし,本研究では近交系マウスであるDBA/2J系マウス(DBA/2J: HVRが良く,発達が良く,形態も正常なCBを有する)とA/J系マウス(A/J: HVRは悪く, CBは小さく,正常な形態が保たれていない)のCBの電気生理学的差異とその原因(神経伝達物質の受容体やイオンチャネル等)について, whole cell patch clamp法やsingle cell RT-PCR法用いて検討-した。 【電気生理学的特徴】DBA2/JのCBでは.正常なglomus細胞(GC)が多く観察され,そのGCの電圧依存性カリウムチャネル(Kv channel)の低酸素への感受性が強いことが示唆された。また, DBA/2JのGCのKv channelでは,アレチルコリンによって調節されており,電圧依存性カルシウムイオン活性型カリウムチャネル(BK channel)が重要な役割をしていた。一方, A/Jでは正常のGCは極わずかしか観察されず, Kv channelの低酸素への感受性も低いことが示唆された。 【神経伝達物質の受容体やイオンチャネルの特徴】DBA/2JおよびA/JのGCにおいて,多くのoxygen-sensitive K channel, dopamine receptor, nicotinic receptor, muscarinic receptor, tachykinic receptor; GABA-A recebtorのサブユニットの発現を確認した。そして,A/JのGCではDBA/2Jと比較して,いくつかのサブユニットの発現が減少しており,このことがGCの低酸素応答やアセチルコリンへの感受性の低下を引き起こしていると推測した。
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