*全脳虚血モデル(心肺停止モデル)における脳灰白質(神経細胞体)・白質傷害(神経軸策)と、これらの傷害に対する抗酸化薬エダラボンの保護作用 オスSDラットをイソフルラン麻酔下に気管内挿管し、人工呼吸停止とエスモロールを用いて5分間の心肺停止を誘導した。呼吸再開と大動脈よりエピネフリン・重炭酸・ヘパリン入りの酸素化血液を逆行性注入することにより心拍を再開させた。ラットを以下の4群に分けた。シャム群:手術操作は行うが、心肺は停止させない。虚血群:心拍再開直後に生食を静脈内投与。エダラボン1群:心拍再開直後にエダラボン3mg/kgを投与した。エダラボン2群:心拍再開60分後にエダラボン3mg/kgを投与した。 1週間後、もしくは2週間後に脳スライスを作成し、神経細胞体傷害はクレシルバイオレット染色とMAPII免疫染色で、ミクログリアはIbalの免疫染色、軸索傷害はβAPPの免疫染色で同定した。心肺停止1週間後に、海馬CA1の神経細胞体傷害とミクログリアの活性化が認められたが、同部位の軸索傷害は認められなかった。2週間後にはCA1の神経細胞体傷害のさらなる進行は認められなかったが、広範囲な軸索傷害が認められた。狭義の意味での白質である脳梁の軸索傷害も2週間後に認められた。心肺蘇生60分後に投与したエダラボンにより、ミクログリアの活性化、CA1の神経細胞体の傷害と軸索傷害すべてが有意に抑制された。 活性化ミクログリアは活性酸素種を産生し細胞傷害に働くとともに、活性酸素種によって活性化される。エダラボンは抗酸化作用を通して神経細胞体のみならず神経軸索傷害も抑制すると考えられる。また、心拍再開60分後に投与しても有効であることから、エダラボンの全脳虚血に対する臨床での有効性が示唆された。
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