今回の研究は、膀胱癌の癌化、浸潤、進展に重要な働きのあるmiRNAを網羅的に探索し、分子生物学的手法により証明することによって、将来的にはsmall interfering RNA(siRNA)を用いた分子標的治療を探ることを目的としている。本研究により膀胱癌に特異的なmiRNAを同定できれば、miRNAの標的遺伝子を調べることにより膀胱癌の癌化、進展に対するメカニズムの解明につながり、膀胱癌で異常に亢進している増殖シグナルを一挙に叩くmiRNAによって膀胱癌治療をできる可能性がある。しかし泌尿器科癌とmicroRNAの関連は未だ報告が僅かで不明な点が多い。そこで比較的症例数が多くサンプルが整っている前立腺癌の進展におけるmicroRNAに焦点をあてて研究を開始している。現在までの研究過程において、標的遺伝子の転写が抑制されるヘテロクロマチンの維持、クロマチンサイレンシングに寄与を行っているポリコーム群蛋白質Mel-18が3'非翻訳領域にmicroRNA結合予測配列をもち、その位置にある1遺伝子多型1805T/C多型の解析から、Mel-18遺伝子の発現低下は前立腺癌患者において進行を規定する危険因子であることが示唆されている。現在、泌尿器科癌細胞株や前立腺癌組織を用いたリアルタイムRT-PCR法や免疫組織染色にてMel-18、BmilおよびmiRNA181aの発現を調べており、前立腺癌患者の臨床および病理学的因子について比較検討を行う予定である。
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