研究概要 |
前立腺癌のホルモン抵抗性獲得の分子機構の解明と,その臨床応用を前提とした解析について,基礎的および臨床的解析を行ない,以下のような成果を得た。 1.protein chip systemを用いて表面増強型レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析装置(SELDI-TOF MS, Ciphergen社製)にて,ホルモン抵抗性獲得過程において発現増強する血清蛋白の同定とその機能解析をおこなった。具体的には,経時的に採取された転移性前立腺癌患者の血清を用いて,治療前と治療開始後(奏功期・治療不応初期・中期・後期)の5点の血清を解析に使用した。6640Daのピークをもつ蛋白質を同定し,アミノ酸配列の決定を行なった。 2.ホルモン療法への反応性や予後についての遺伝子多型の解析として,転移性前立腺癌患者における13種類の遺伝子多型について解析を施行した。IGF-IやCYP 19の遺伝子多型が重要であることを見出した。 3.ホルモン依存性喪失過程における神経内分泌分化の関与の解析として,神経内分泌分化マーカーであるクロモグラニンAおよびNSEの組織中・血清中の発現の相関について解析した。その結果,クロモグラニンAが組織、血清間でもっとも相関を認め,神経内分泌分化マーカーとして最も優れたものと考えられた。全国12施設における,初回ホルモン療法(MaXimum androgen blockade)再燃例でのアンチアンドロゲン交替療法の効果と意義について臨床的解析をおこなった。その結果,二次ホルモン療法としてアンチアンドロゲン交替療法の反応性が,進行性前立腺癌患者の予後因子となることが示唆された。
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