研究概要 |
本研究における目的は、膀胱におけるTRPA1の局在を同定し、TRPA1が膀胱求心路における伸展受容器(メカノセンサー)として作用していることを証明するとともに、その作用機序を明らかにすることである。このことによって、膀胱求心路における重要な情報伝達機構が解明され、過活動膀胱などの排尿障害に対する新しい治療薬の開発に繋がるものと期待される。 (1)ヒト膀胱上皮細胞にTRPA1蛋白およびmRNAの発現が確認された。正常膀胱に較べて、閉塞膀胱においてTRPA1の発現は有意かつ顕著に増加した。(UROLOGY72:450-455,2008) (2)ラット膀胱および後根神経節にTRPA1のmRNAの発現を証明した。膀胱を支配する後根神経節および膀胱粘膜直下を走行する知覚神経終末(C線維)にTRPA1蛋白の局在を証明した。(UROLOGY70:826-831,2007) (3)ラット膀胱内にTRPA1アゴニストを持続的に注入することによって,惹起される排尿反射の間隔が短縮し、膀胱容量が減少した。この反応は,カプサイシンによって知覚神経C線維を脱感作すると有意に抑制された。したがって,膀胱内のTRPA1を活性化することによって,C線維知覚神経路を介した排尿反射の亢進が起こることが解明された。(UROLOGY70:826-831,2007) これらの実験結果から、膀胱上皮あるいは膀胱粘膜下知覚神経終末に発現するTRPA1が膀胱知覚神経伝達(尿意)に関与していると考えられた。さらに、ヒト閉塞膀胱上皮に過剰発現するTRPA1が閉塞膀胱における過活動膀胱発生機序に関与している可能性を示唆している。
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