研究概要 |
本年度は,間質細胞内TGFb/BMPシグナルの変化が間質細胞の増殖や分化を制御していることを,ラット胎児泌尿生殖洞間充織細胞を用いて確認した。 すなわち,胎生18日目の胎児(雄)より泌尿生殖洞間充織細胞(rUGM)を取り出し,血清含有培地にて初代培養した。血清を含まない培地に変更した後,1ng/mLTGFbもしくは100ng/mLSHH(sonic hedgehog)を添加し,2-6日間の処理を施行した。 rUGMに対して,TGFbおよびSHHは細胞増殖を低下させ,細胞形態は筋細胞様に変化した。そこで,day2およびday6におけるRNAを回収し,リアルタイムPCRでRNA発現量を比較した。筋線維芽細胞の分化マーカーであるtenascin-C mRNAはTGFbおよびSHH処理により顕著に上昇したが,線維芽細胞の分化マーカーvimentin mRNAは減少した。平滑筋細胞の分化マーカーのうち,myosin mRNAはTGFbに反応し,g-actin mRNAはSHHに高い反応性を示した。 以上より,間充織細胞の分化、形態的な変化は間質細胞内TGFb/BMPシグナルの活性化に依存していることを確認した。今回,TGFbによる遺伝子変化がSHHによる変化とは一致しなかったことから,線維芽細胞⇒筋線維芽細胞⇒平滑筋細胞という一運の分化過程が複数の因子に制御されていること,また,それら因子が単独では十分な分化を誘導できない可能性が示唆された。
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