研究概要 |
Periostinの発現抑制と膀胱癌発生との関連を明らかにし,Periostinによる癌細胞の浸潤、転移抑制の分子機構を解明するために,まず免疫組織学手法によりPeriostinの膀胱組織での局在と発現を検討した。正常膀胱では,Periostin蛋白は上皮直下の問質にベルト状に強発現しており,Periostinの本来の特性より膀胱の尿の充満というメカニカルストレスに対応したものである可能性が考えられた。一方,膀胱癌組織では,ベルト状の発現は消失しており,このことが癌細胞の浸潤・転移の促進に関与している可能性が示唆された。次に,Periostinのalternative-splicingと膀胱癌発生との関連を検討したところ,正常組織で発現しているwild type Periostinの発現が癌組織では検出できず,浸潤、転移抑制能が消失したvariant typeのみが癌組織では発現していることから,periostinのalternative splicingが膀胱癌発生に関与していることが示唆された。さらに,PeriostinがTAK1キナーゼを活性化することから,PeriostinとTAK1の細胞浸潤能への影響を,293T細胞を用いたマトリゲルアッセイで検討した。これらの遺伝子をそれぞれ単独で導入すると浸潤能抑制効果が認められるが,両方を共発現することにより浸潤能抑制効果の増強が認められた。このPeriostin入による浸潤能抑制効果は,siRNAによる細胞内のTAK1発現抑制により阻害された。また,deletion mutantsを用いた実験からPeriostinのC末端領域が癌細胞の浸潤抑制とTAK1活性化の両方に重要であることも明らかにした。これらの結果から,PeriostinはTAKI活性化を介して癌の浸潤・転移抑制に関与していると考えられる。
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