研究概要 |
われわれは尿路上皮癌のプロテオーム解析により,小胞体タンパク質カルレティキュリン(CRT)が癌患者尿中で高率に検出されることを示し,尿中診断マーカーとしての可能性を示唆した(Kageyama et al.,Clin Chem,2004).今回,ELISA 法による測定キットを作製したので,その診断能につき報告する.【方法】リコンビナントヒトCRT を大腸菌に発現させ標準物質とした.ビーズに抗CRT モノクローナル抗体を固相化し96 穴プレートに入れ,尿検体と反応後にPOD 標識抗CRT ポリクローナル抗体を結合させ化学発光で検出する,2 抗体サンドイッチELISA 法で測定した. 対象は膀胱癌患者尿(109検体), 非膀胱癌患者尿(60検体, 腎癌, 前立腺癌, 前立腺肥大症, 尿路結石症など), および特に尿路異常を認めない健常者尿(40検体)である. 【結果】全209検体のCRT濃度測定の結果からROC曲線を作成し, もっとも診断効率の良い, 2.85ng/mL 以下を基準値と設定した. 膀胱癌患者尿(109検体)のCRT中央値は12.7ng/mL, 74検体で陽性で感度は67.9%であった. 病理学的因子でみると, 異型度G1:5.5±7.7(mean±SD), G2:42.3±63.8, G3:74.3±149.9, 深達度Tis : 15.6±17.5, Ta : 48.9±130.6, T1 : 56.1±74.4, T2-4:69.0±86.0, 腫瘍長径 < 1cm:16.4±30.6, 1-3cm:60.4±83.4, 3cm<:136.6±225.5ng/mLで, それぞれ臨床的悪性度が進むにつれてCRT値が増加した. 一方, 非膀胱癌患者尿では中央値<0.5ng/mLで, 15検体(25%)で偽陽性を呈した. 健常者尿と併せて非膀胱癌群とらえると, 100検体中20検体で偽陽性を示し, 特異度は80%であった. 【考察】尿中CRTは膀胱癌尿中診断マーカーとして臨床応用可能と考えられた.
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