研究概要 |
本研究助成により、我々はこれまでに難治性腎細胞痛患者に対して、不活化した腫瘍をパルスした樹状細胞とIFN-α投与による併用療法を施行し、その安全性と有効性を確認した(Tatsugami K et al. International Journal of Urology 2008)。IFN-αによる免疫療法では、樹状細胞状の分子の発現や樹状細胞とT細胞の反応を増強することは報告されているが、抑制性T細胞に影響を与えるかについては不明な点が多い。このため、腎細胞がん患者に対するIFN-αによる免疫療法が末梢血細胞に与える影響を調査し、治療効果と末梢血細胞の変化について検討した。根治的腎摘出術施行後、転移を有する患者18名に対してIFN-αまたはIFN-α+IL-2による免疫療法を行い、治療前後の末梢血中の抑制性T細胞(CD4+FoxP3+T細胞)をFACSにて測定した。抑制性T細胞はIFN-α単独投与2週間後で有意に減少するが、投与2ヵ月後では投与前のレベルにまで回復していた。一方、IFN-α+IL-2では治療開始後2週間で抑制性T細胞は有意に増加していた。IFN-α単独治療による抑制性T細胞数と臨床効果の比較では、SD群ではPD群に比べてIFN-α投与前の抑制性T細胞が有意に低値であった。IFN-αによる治療効果は、治療前の抑制性T細胞が少ないほうが有利であることが示唆された(Tatsugami K. et al. J Interferon Cytokine Res.2010)。 また、実験動物を使用した研究において、我々はサイクロフォスファミドを使用したトレランスモデルにおける骨髄幹細胞移植の抗腫瘍効果について研究し報告してきた(Eto M, Tatsugami K et al. Clin Cancer Res. 2008, Hamaguchi M, Tatsugami K et al. Cancer Sci. 2009, Kamiryo Y, Tatsugami K et al. Cancer Res. 2009)。今回、このモデルにける抑制性T細胞が抗腫瘍効果に与える影響に関して調査した。骨髄幹細胞移植による抗腫瘍効果では、サイクロフォスファミドによるレシピエントの抑制性T細胞の減少が、抗腫瘍効果を発揮するホストからの反応性T細胞増殖とIFN-γ産生に影響を与え、抗腫瘍効果を発揮することが証明された。
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