研究課題/領域番号 |
19591856
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
江藤 正俊 九州大学, 大学病院, 講師 (90315078)
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研究分担者 |
立神 勝則 九州大学, 大学病院, 助教 (90380617)
原野 正彦 九州大学, 大学病院, 助教 (90380451)
吉開 泰信 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (90158402)
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キーワード | renal cell carcinoma / bone marrow transplantation / mixed chimerism / radiation / tumor antigen peptide / GVT effect |
研究概要 |
末梢血におけるキメラの程度と抗腫瘍効果における意義についての検討はBALB/cマウスに同系の腎癌であるRenca細胞を皮下投与するモデルを用いた。腫瘍の生着を確認した上で処置を開始。ヒトのミニ移植の時と同様にMHC(主要組織適合抗原)が一致するDBA/2マウスの脾細胞(SC)と骨髄細胞(BMC)を静脈内投与して、その2日後にcyclophosphamide(CP)を腹腔内投与し、CPの翌日にドナーのリンパ球(LNC)を追加投与した。一方、同様のマウスの組み合わせを用いて、放射線照射を用いた骨髄移植モデルも作成し、放射線のdoseを変えることでさまざまなレベルの骨髄キメラを作成した。末梢血におけるドナー由来細胞の割合をフローサイトメトリーにて経時的に解析し、キメラ状態と抗腫瘍効果について検討したところ、6Gy以上の放射線照射でドナー由来の完全キメラを誘導できたが、わずかな抗腫瘍効果が誘導できるのみであった。一方、CPを用いた群では、ドナー由来のキメラの割合は低いものの、著明な抗腫瘍効果が誘導できた。移植後15日目の末梢リンパ節細胞数の回復を調べたところ、放射線照射群ではまだほとんど回復していなかったのに対して、CP群では無処置群と同等レベルまで回復していた。以上の結果より、ミニ移植における抗腫瘍効果の誘導に完全キメラの誘導は必須ではなく、ホストの免疫抑制状態の回復が重要であることが示された。この結果はClin Cancer Resにacceptされ、まもなくpublishされる予定である。T細胞レセプター(TCR)を用いた本モデルのメカニズムの解析においては、ホストに反応性を有するTCRを持ったドナー由来T細胞が固形癌の腫瘍局所で実際に著明に増殖していることを示すことができ、その結果は現在投稿準備中である。腫瘍抗原ペプチドを用いたドナーの前感作による抗腫瘍効果の増強については、前感作ドナーのリンパ球輸注を行い、GVHDを悪化させることなく、抗腫瘍効果の増強を誘導させることに成功した。これについてはさらなる免疫学的解析を追加中である。
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