細胞内カルシウム濃度([Ca^<2+>]_i)と張力の同時記録法および脱膜化標本(スキンド標本)による張力測定法を用い、モルモット排尿筋において膀胱出口閉塞(BOO)ならびに過活動膀胱(OAB)とCa^<2+>感受性調節機序の関連を検討中である。モルモットで尿道部分閉塞を作成した群(BOO群)と、同時期にsham手術を行った群(sham群)の両群において、術後8-12週における排尿筋を取り出し、張力と[Ca^<2+>]_iの同時測定を行なった結果、同一の[Ca^<2+>]_iレベルにおいて排尿筋のアゴニストであるカルバコール(CCh)により発生する収縮張力はBOO群において有意に高いことが確認され、CChの濃度-反応曲線はsham群に比べBOO群では左方移動していた。また、αトキシン処理による脱膜化標本を用いた張力実験からは、[Ca^<2+>]_iを外液Ca^<2+>濃度に固定した状態で、CChによるムスカリン受容体刺激により新たに発生する収縮張力の程度はsham群に比べBOO群において有意に高く、非処理標本の場合と同様にCChの濃度-反応曲線はsham群に比べBOO群では左方移動した。ウエスタンブロット法により、RhoA、Rho-associated kinase(ROCK)I、ROCKIIおよびCPI-17 proteinsの発現は両群ともに観察されたが、sham群に比べてBOO群でその発現程度が上昇していた。張力と[Ca^<2+>]_iの同時測定により、一定濃度のCChにより発生する収縮張力のうち、RhoA-kinaseの活性化に原因すると考えられる成分の割合を、本酵素の特異的阻害剤(Y27632)を用いて検討した結果からは、BOO群においてその阻害程度が有意に高く、BOO群ではRhoA-kinaseの活性が克進している可能性が示唆された。現在は、その阻害作用の濃度依存曲線を作成し阻害作用の特徴を比較検:討中である。さらに脱膜化標本を用い[Ca^<2+>]_iを外液Ca^<2+>濃度に固定した状態で、CChにより発生する収縮張力に対するY-27632の阻害作用を両群で比較検討する予定である。
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