研究概要 |
予定していた実験のうち、Wistar ratsから採取した脂肪組織片とMDCKを1週間コラーゲン培養して、MDCK細胞の変化に焦点を置いて検討を行った。ヘマトキシリンエオジン染色、電子顕微鏡による形態学的な変化の検討を行い、免疫組織学的、生化学的手法を用いて細胞分化の蛋白発現を検討した結果、脂肪細胞が、以下のごとく尿細管上皮の増殖と分化に重要な役割を示すことが示唆された。 (1)形態学的検討で、単独培養のMDCKの細胞の高さが5.9±1,5μmであったのに比べ、脂肪組織片と混合培養したMDCK細胞は高さが9.5±1.4μmと高円柱状となり、核は基底層よりに局在して極性を示した。電子顕微鏡で微絨毛や基底膜の形成が確認できた。 (2)BrdU、ssDNAによる検討では、脂肪組織片がMDCK細胞の増殖能、アポトーシスは共に有意差(P<0.05)をもって抑制された。 (3)細胞極性化関連分子のうち、MDCK細胞内のaPKCとcdc42は発現が強調される一方,PAR3とPTENの発現には影響は見られなかった。 (4)細胞膜局在イオン輸送分子、ペンドリンは、脂肪組織片との混合培養により発現が誘導された。 (5)タイトジャンクション構成分子であるZO-1も、混合培養により発現が促進された。 次年度は、引き続き脂肪組織周囲に出現した間葉系幹細胞もしくは前脂肪細胞由来の紡錘形細胞を免疫組織化学で同定し、培養体中めアディポサイトカインの変化を比較検討する。
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