初年度となる平成19年度は、胸髄損傷ラットの脊髄髄腔内への骨髄間質細胞移植による下部尿路機能の再構築の可能性について検討した。 イソフルレン吸入麻酔下に下部胸髄で完全に脊髄を切断し、2週間経過した時点(慢性脊損で過活動膀胱状態時)のSD系ラットをレシピエントとし、Green fluorescent protein (GFP)ドナーラット由来のGFP陽性骨髄細胞浮遊液(1×10^<6-7>細胞/0.5ml)をレシピエントの腰仙髄領域の脊髄髄腔内に注入した(移植群)。シャム群として骨髄間質細胞の培養液のみを腰仙髄領域の脊髄髄腔内に注入したラットを置いた。移植から4週間後、ウレタン麻酔下の連続膀胱内圧測定と、腰仙髄組織におけるGFP陽性細胞の有無を検討した。 その結果、移植群では自排尿を伴う膀胱収縮が一定間隔で検出された。残尿量は3-9mlとかなりの個体差があった。また、移植群の腰仙髄中にはレシピエントの神経細胞に混在したドナー由来のGFP陽性神経様細胞を多数認めた。 以上のことから、胸髄損傷ラットへ移植した骨髄細胞は神経様細胞へと分化し、排尿障害を部分的に改善したことが示唆された。
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