2年目となる平成20年度は、脳梗塞ラットの脳室内への骨髄間質細胞移植による下部尿路機能の再構築の可能性について検討した。 SD系メスラットを対象に、イソフルレン吸入麻酔下に右内頚動脈からナイロン糸を脳底動脈まで挿入して脳梗塞を作製した。翌日、眼剣下垂があることを確認した脳梗塞ラットをレシピエントとし、Green fluorescent protein(GFP)ドナーラット由来のGFP陽性骨髄細胞浮遊液(1×10^5細胞/5μl)をレシピエントの左側脳室内に注入した(移植群)。シャム群として骨髄間質細胞の培養液のみを左側脳室内に注入したラットを置いた。移植から2日後、1週間後、または2週間後にウレタン麻酔下の連続膀胱内圧測定を行った。また、移植群では移植から4週間後に脳組織におけるGFP陽性細胞の有無を検討した。その結果、正常ラットに比べて脳梗塞直後(2日後)のシャム群および移植群の膀胱収縮間隔は短く、膀胱基線圧は上昇していた。しかし、移植群においては、脳梗塞直後に比べて2週間後には膀胱収縮間隔と膀胱基線圧共に正常ラットとほぼ同程度にまで改善していた。シャム群でも経時的に排尿反射は多少改善したが、その程度は移植群のほうが勝っていた。また、移植群の脳組織にはレシピエントの細胞に混在したドナー由来のGFP陽性神経様細胞が散在していた。以上のことから、脳梗塞ラットへ移植した骨髄細胞は脳組織で生着し、脳梗塞に伴う排尿障害を部分的に改善したことが示唆された。
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