研究課題/領域番号 |
19591864
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
中井川 昇 横浜市立大学, 附属病院, 准教授 (00237207)
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研究分担者 |
矢尾 正祐 横浜市立大学, 医学研究科, 准教授 (00260787)
岸田 健 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 准教授 (60254166)
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キーワード | トランスレーショナルリサーチ / 癌 / 細胞・組織 / 遺伝子 / プロテオーム |
研究概要 |
本邦では年間1万人前後の新規腎細胞癌患者が発症すると言われています。近年の画像診断の普及に伴い、早期の段階で腎癌が発見されるようになり、根治的手術の可能な症例が増え、腎癌の治療成績は向上してきていますが、手術適応のない腎癌に対するサイトカイン療法の治療成績は充分な数字とは言えず、根治的手術が不可能な進行症例については以前と同様にその治療が困難であり、新たな治療法の開発が急務と言われています。私たちはここ数年の研究によって淡明細胞型腎癌の増殖と腫瘍形成がMET蛋白と呼ばれるチロシンキナーゼの活性に依存していることを明らかにしました。そこで、MET蛋白を足掛かりとして腎癌細胞内の癌化シグナルの詳細を明らかにし、癌化シグナルそのものを標的とする新しい腎癌治療法を開発していきたいと考えました。 平成19年度の本研究の成果として、MET特異的阻害剤であるPHA-665752が濃度依存性にMET蛋白の活性を阻害することによって、MAP kinase、c-Actといった情報伝達系に関わる細胞内蛋白の活性が阻害されること、細胞接着において重要な働きをしているIntegrinの発現が抑制されること、その結果として、腎癌細胞の増殖、運動能が抑制されるとともに、アポトーシスを誘導することを明らかにしました。またSiRNAを用いてMET蛋白の発現を抑制することによっても、腎癌細胞の増殖が抑制され、アポトーシスが誘導されることを明らかにしました。さらに、実際の腎細胞癌組織においてもMET蛋白の発現、活性が正常腎組織と比較して、亢進していることも明らかにしました。この知見はMET蛋白下流のシグナルが腎癌の癌化において重要な働きをしていることを示唆するものと考え、今後その詳細な解析を進めていく予定です。
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