研究概要 |
炎症の分子メカニズムとして酸化ストレスがあり、前立腺癌の発生や進展にも酸化ストレスが関与している可能性が推測されている。この研究では、我々が以前より解明してきたアンジオテンシンII(Ang-II)の前立腺癌に及ぼす機能のうち、Ang-IIがもつ酸化ストレス作用に注目し、前立腺癌発生への関与の可能性について解析した。また、前立腺におけるAng-IIの酸化ストレス誘発を、前立腺癌および正常細胞で確認し、それがARBで抑制されるかどうかを調べた。 ヒト前立腺癌細胞株のLNCaP細胞を用い、Ang-II刺激によるAktのリン酸化をウェスタン法で調べた。さらに、酸化ストレス関連タンパクの発現が、Ang-IIおよびAT1レセプタープロッカー(ARB)であるカンデサルタン刺激により、どのように変化するかウェスタン法で解析した。Ang-IIによるDNAダメージを見るために、培養液中の8-OHdG発現を調べ、またウェスタン法でチェックポイントタンパクのp53,Chk2とcdc2の発現も調べた。免疫染色でiNOSおよびスーパーオキシドの発現を、Ang-IIおよびカンデサルタン刺激したLNCaP細胞で調べた。 Aktのリン酸化は、Ang-II刺激により促進され、カンデサルタンによって活性は抑制された。酸化ストレス関連タンパクのp47phox,SOD2,GPxは、Ang-II刺激により発現が促進され、カンデサルタンや酸化ストレスの抑制酵素であるカタラーゼによって発現は抑制された。LNCaP細胞の培養液中8-OHdGは、やはりAng-II刺激によって増加し、カンデサルタン添加で抑制された。炎症で誘起されるiNOSは、Ang-II刺激で細胞内において強く発現誘導された。さらに、スーパーオキシドの発現もAng-II刺激で誘導され、それらはカンデサルタン添加によって抑制されていることが確認された。
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