研究課題/領域番号 |
19591870
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大家 基嗣 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00213885)
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研究分担者 |
三上 修治 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20338180)
金井 邦光 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80365361)
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キーワード | 腎細胞癌 / aryl hydrocarbon receptor / 透析 / 透析 / 尿路上皮腫瘍 |
研究概要 |
透析腎に合併する後天性多嚢胞化腎に腎癌が高率に発生するメカニズムを検索することを目的に研究を行った。嚢胞内には外来性の異物が腎機能不全のために蓄積しているものと考えられる。ダイオキシン等の発癌物質が細胞内に入った時に結合し、解毒酵素を誘導するレセプター型転写因子であるAryl hydrocarbon receptor(AhR)の活性化が生じているかどうかを検索した。63例のパラフィン包埋腎細胞癌検体をAhRの抗体で免疫組織染色を行った。このうち6例は血液透析患者の後天性多嚢胞化腎に発生した腎細胞癌であった。病理組織学的には淡明型細胞癌49例、乳頭型11例、嫌色素型3例であった。AhRが転写因子であることを考慮し、核染色の陽性例を活性化と判断した。正常腎組織ではAhRの活性化を認めなかった。腎細胞癌におけるAhRの発現は14例に認めた。内訳は淡明型細胞癌12例、乳頭型1例、嫌色素型1例であった。後天性多嚢胞化腎の異型嚢胞および腎細胞癌に陽性所見はなかった。T-stageでは進行例で有意に陽性例が多かったのに対し、N,M-stageでは相関は認められなかった。予想と反して、AhRの活性化は後天性多嚢胞化腎における腎細胞癌の発生には寄与せず、腎細胞癌の初期段階よりも、進展に伴い活性化してくることがわかった。発がん物質の暴露という観点からタバコと発がんの関連がより深い、尿路上皮腫瘍である腎盂癌と尿管癌におけるAhRの活性化を検討した。腎細胞癌と同様に癌の浸潤とともに活性化が生じることが判明した。AhRの活性化は腎・尿路腫瘍に共通してがんの進展に寄与している可能性が示唆された。
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