研究課題
透析患者では一般人よりも腎細胞癌の発生率が10〜40倍高い。原因は不明である。透析腎は多数の大小不同の嚢胞を合併し、acquired cystic kidney disease (ACKD)と呼ばれている。嚢胞は原則として1層の細胞から硬性されるが、多層の細胞が乳頭状あるいは多層に重なるように構成されている場合があり異型嚢胞と呼ばれている。ACKDにはこの異型嚢胞と呼ばれる病変が存在し、腎細胞癌の発生との関連性が示唆されている。腎細胞癌の起源を探るべく、微小病巣の探索を行った。Carbonic anhydrase IX (CA9)はVHL遺伝子が不活化した場合に蓄積する蛋白である。VHL患者の淡明細胞癌周囲にはCA9陽性の微小病変が多発している。Aquaporin (AQP)は水輸送に関与する膜蛋白であり、尿細管の部位特異的な発現がある。AQP1は近位尿細管に、AQP2は集合管に発現している。透析腎癌19例を対象に検索を行った。AQP1,2, CA9発現によって嚢胞は4種に分類可能であった。1型嚢胞はAQP1のみ陽性、2型嚢胞はすべて陰性、3型嚢胞はAQP2のみ陽性、4型嚢胞はCA9のみ陽性、と分類した。異型嚢胞7個は1型嚢胞であった。1型嚢胞は近位尿細管由来であることが示唆される。異型嚢胞、乳頭腺腫および乳頭癌の多くが同じ染色性を示していた。乳頭癌へのadenoma-carcinoma sequenceの存在が示唆された。4型嚢胞では、AQP1(-), CA9(+)であり、遠位ネフロン由来と考えられる。また、淡明細胞癌が同様の染色性を示していることから、4型嚢胞が淡明細胞癌の発生母地の可能性がある。透析腎から発生する腎細胞癌には2つの発がん過程が存在することが示唆された。
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