【目的】転写因子NF-κBは、免疫・炎症に深く関与し、アポトーシスを阻害する作用も知られている。このため、NF-κBを阻害する化合物は新しい抗癌剤として発展する可能性がある。DHMEQは抗生物質であるepoxyquinomicin Cの構造をもとに分子デザイン・合成された新規epoxydone化合物である。本研究初年度に、DHMEQが膀胱癌患者より樹立され、恒常的にNF-κBが活性化し、各種サイトカインを産生しているヒト尿路上皮癌細胞KU-19-19においてNF-κB活性を阻害することにより、in vitroおよびxenograft modelにおいて抗腫瘍効果を示すことを報告した。本年度においては、DHMEQによる、膀胱癌に対する新規治療薬としての位置づけを確立するため、抗癌剤CPT-11との併用による膀胱癌に対する殺細胞効果増強の検討を行った。【方法および結果】KU19-19細胞で、5μg/mL以上のDHMEQ単独、0.15ng/mL以上のSN38(CPT-llの代謝活性物)単独投与により濃度依存性に増殖抑制効果が認められた。無治療群と比較し、5μg/mLDHMEQ単独投与で18%、0.3ng/mL SN38単独投与で26%、両治療併用群で55%の細胞障害増強が示された。NF-κBはSN38単独投与で活性化されたが、DHMEQはこれを抑制した。さらにKU19-19マウス皮下腫瘍モデルを用し、て抗腫瘍効果を検討した。実験開始25日目におけるDHMEQ+CPT-11併用群の腫瘍体積(374±73cm^3)はDHMEQ単独群(1962±202cm^3)、CPT-11単独群(821±82cm^3)、無治療群(2675±238cm^3)と比較し有意に減少していた。併用治療群の組織内において有意なCD31、MMP-9の減少、アポトーシスの増加が認められた。【結論】以上より、DHMEQはCPT-llのNF-κB活性化を効率に抑制し、膀胱癌に対し抗腫瘍効果の増強を示した。DHMEQとCPT-llの併用は新規膀胱癌治療として期待できると考えられた。
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