研究概要 |
献腎移植成績は短期ならびに長期においても世界に誇る良好な成績を報告しているが、移植後早期は、移植腎機能発現遅延に伴い平均約2週間の維持透析期間を必要とし、primary non-functionとともに臨床上この間のレシピエント管理が極めて重要となる。DCD腎における移植後変化は、一般的に組織学的特徴として急性尿細管壊死(ATN)に代表される腎機能発現遅延により引き起こされるが、発生機序はさまざまな要因を含み、確立した予防法がなく、移植腎の長期予後にも影響を及ぼし、慢性移植腎症(CAN)のリスクファクターとしても知られている。我々は動物実験と臨床検体のmicroarray解析から共通の発現亢進遺伝子として分泌蛋白TIMP-1,REGIA,Lactotransferin,SLPIに注目した。移植腎機能回復のバイオマーカーとして、血清中のTIMP-1濃度を測定し意義を検討したところ、生体腎移植症例では移植後も血清TIMP-1値は変化しなかった。一方献腎移植症例では、移植後長期に透析期間を要した症例で、移植後のpeak TIMP-1値が高く、immediate functionであった症例では血清中のTIMP-1値は上昇しなかった。移植後のpeak TIMP-1値と移植前のTIMP-1値の差を検討したところ、移植後透析を要した期間と相関関係を示していた。昨年検討したNGAL(neutrophil gelatinase-associated lipocalin)と同様、移植後の血清TIMP-1値は、献腎移植における無尿期の移植腎機能の回復を示すバイオマーカーの一つと考えられ、本研究によって、血清NGAL値と血清TIMP-1値の有効性を報告できた。本研究の成果の一部は、国際移植学会で、microarray解析のデータととも報告を行い、microarray解析のデータとTIMP-1に関しての研究の成果は、ともにCell Transplantationに投稿し掲載が決定した。
|