研究概要 |
検体採取およびその検索について同意の得られたヒト陰茎海綿体をサンプルとして、real-time PCR法により、プロスタグランジン合成系(COX-1,COX-2)、同分解代謝系(prostaglandin transporter PGT,15-hydroxyprostaglandindehydrogenase PGDH)のmRNAレベルの発現定量を試みた。ヒト陰茎海綿体5例、1例では亀頭海綿体を集積することができた。これらの検体では組織学的に、膠原線維や血管系から構築されているため、Iaser capture microdissectionによる構成成分の分離抽出は必要ないものと考えられるため、海綿体組織全体からtotal RNAを抽出した。このあと、逆転写反応により作成したfirst strand cDNAをサンプルとしてgene specific primerを用いて、各遺伝子について定量的PCRを行った。プロスタグランジン合成系の代表であるCOX1(定常的発現酵素)、COX2(一過性強発現酵素)のいずれも強い発現が認められた。この発現比は約10-20対1でCOX2の発現が優勢であったことは興味深い。ただし、手術検体であり、手術侵襲に対する緊急的イベントとしてのCOX2強発現と解釈することも可能かもしれない。プロスタグランジン分解代謝系遺伝子のうちその取り込み輸送体の代表であるPGTの発現は非常に強く、細胞内代謝酵素PGDHの発現はPGT発現量の20-40分の1程度であった。これと比べて亀頭組織ではPGDHとCOX1の発現量が陰茎海綿体のそれらと比べて、それぞれ約100倍、20倍と高く、各組織の役割の違いを想定させる結果であった。今後、さらに検体数を増やしてデータの正確性を確認するとともに、ラット組織での検討、各種遺伝子組み換えを行った陰茎組織での機能実験を追加してゆく予定である。
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