研究概要 |
臨床材料を用いてプロトコール腎生検の臨床病理学的検討を行った。腎組織におけるthyroidizationは慢性腎孟腎炎や閉塞性腎症でよくみられる、Tamm-Horsfall glycoprotein ()によるコロイド様硝子円柱形成をさす所見である。移植腎組織に於いてもこのような所見はしばしば見られるが、これらの所見を検討し病理学的検討を行った。対象は2006年1月から2008年4月までに施行した移植後腎生検251例(のべ患者数103名)。16症例にthyroidizationを認めた。そのうち4例でTHPのボウマン嚢への逆流、3例でTHPの間質への逆流,4例で尿細管間質炎を認めた。これらの症例の中で3例ではVURの合併、6例では尿路感染症の既往を認めておりthyroidizationやそれに随伴する所見を認めるものではsubclinicalな尿路合併症の存在を疑わせた。またこれらの所見を有する症例では移植腎の予後にも影響する可能性があり厳重な管理が必要と考えられた。 また、移植腎生検の生検本数に関する検討では、3本を診断した結果を正診とした場合、1本、2本での診断の正診率は78.9%、88.2%と本数が少ないほど不正確な診断となった。移植腎内での組織変化がfocal、localであることもしばしばであり、より多くの検体採取が正確な診断につながると考えられた。しかし多数回の生検が腎組織に与える影響(その後の生検での誤診も含め)も考慮する必要があると考えられた。
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