科学研究費の補助を受け、平成19~20年度にかけて研究目的である、1)覚醒ラットにおける確実性と再現性の高い射精誘発方法とこれを用いた機能評価法の確立、2)前立腺肥大症治療薬の射精機能障害の解析、3)糖尿病の合併症である射精機能障害とその発現機序の解明について、概ね達成することができた。最終年度にあたる本年度は、当該研究の最終目標である射精機能障害における有効な治療薬の探索に関する検討を行い、以下のような結果を得た。【1】治療薬探索のターゲットは近年、性機能領域で注目を集めているセロトニン(5-HT)受容体作動薬及び遮断薬である。5-HT受容体は現在15種類以上のsubtypeの存在が報告されているが今回は、特に5-HT_2受容体subtypeに焦点をあて、その作動薬および遮断薬の広範囲なスクリーニングを上述の方法を用いて行った。その結果、5-HT_<2c>受容体作動薬が「射精機能促進効果」を、逆に5-HT_<2c>受容体遮断薬が著明な「射精遅延効果」を発現することを初めて明らかにし、射精障害治療への応用の可能性を示唆した(日本性機能学会東部総会にて発表)。特に、5-HT_<2c>受容体遮断薬の射精遅延効果は早漏治療薬となり得る可能性があり、その効果の特徴について継続して検討を行っている。また、5-HT_<2B>受容体遮断薬が5-HT_<2c>受容体作動薬と類似の作用を示すことを観察しており、この受容体subtypeの作動薬および遮断薬についても治療薬となり得る可能性を示唆した。【2】【1】と並行して、治療効果の増大と副作用の軽減を目的とした併用療法の是非について新規機能評価法を用いて検討した。その結果、極めて低用量の5-HT_<2c>受容体作動薬とdopamine D_2受容体作動薬の併用が著明な「射精機能促進効果」を発現すること、さらにこの併用は他機能、特に勃起や排尿機能には影響を与えないことを明らかにし、射精に特異的な効果である可能性を示唆した。今後は更に他のsubtypeについても検討を加え、新規射精障害治療薬の探索を継続して行なう。
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