• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2008 年度 実績報告書

精子の細胞膜コレステロールと先体がもたらすICSI受精卵の遺伝的リスク

研究課題

研究課題/領域番号 19591886
研究機関旭川医科大学

研究代表者

立野 裕幸  旭川医科大学, 医学部, 教授 (80163492)

キーワードマウス精子 / 卵細胞質内精子注入法(ICSI) / 構造的染色体異常 / 先体反応 / カルシウムイオノフォア
研究概要

精子を卵子に直接注入して受精卵を作製する卵細胞質内精子注入法(ICSI法)は男性不妊の治療法として広く利用されている。ICSI法の場合、本来の受精とは異なり、細胞膜や先体が人為的に卵子内へ持ち込まれる。昨年度の研究において、コレステロール除去剤のメチル-β-シクロデキストリンで処理した精子を使って作製したICSI受精卵では、構造的染色体異常の出現率は未処理精子を利用した場合に比べて有意に低く、細胞膜コレステロールが染色体異常の原因の1つであることを報告した。本年度は、カルシウムイオノフォア(A23187)で先体反応を誘起した精子に由来するICSI受精卵の染色体分析を行い、構造的染色体異常率がどのように変化するかを調査した。
A23187(20μM、10分)によるマウス成熟精子の先体反応率は、採取後すぐに処理した場合は73.6%(A群)、処理後2時間培養した場合は84.2%(B群)、2時間培養してから処理した場合は98。5%(C群)であった。これらの精子に由来するICSI受精卵(1細胞期)の染色体異常率はA群23.4%、B群15.8%、C群12.9%であり、A群の頻度は他の2群に比べて有意に高かった。A23187処理精子を利用した体外受精卵(IVF受精卵)の染色体異常率はA群2.8%、B群2.8%、C群1.1%と、いずれの群でも低く、各群間に有意差はなかった。また、これらの頻度は通常のIVF受精卵(2.3%)と同様であった。
以上の結果から、A23187による先体反応の誘起はICSI受精卵における染色体異常の発生を抑えることはできず、逆に異常率は増加することが示された。IVF受精卵の染色体分析結果から、A23187には染色体異常誘発能のないことは確かであるが、この薬品で処理した精子由来のICSI受精卵では、なぜ構造的染色体異常がより高い頻度で発生するのかは不明であり、今後の新たな課題である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2009 2008

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Chromosome aberrations in mouse embryos and fetuses produced by assisted reproductive technology2008

    • 著者名/発表者名
      Tateno H
    • 雑誌名

      Mutation Research 657

      ページ: 26-31

    • 査読あり
  • [学会発表] 配偶子における染色体異常2009

    • 著者名/発表者名
      立野裕幸
    • 学会等名
      第14回日本臨床エンブリオロジスト学会
    • 発表場所
      札幌医科大学(札幌市)
    • 年月日
      20090320-21
  • [学会発表] 精子操作と染色体異常-マウスART研究から見えてくるもの-2009

    • 著者名/発表者名
      立野裕幸
    • 学会等名
      第8回東海不妊内分泌研究会
    • 発表場所
      グランシップ静岡(静岡市)
    • 年月日
      2009-01-31
  • [学会発表] トポイソメラーゼII阻害剤による受精期マウス精子核の染色体異常2008

    • 著者名/発表者名
      立野裕幸
    • 学会等名
      日本環境変異原学会第37回大会
    • 発表場所
      沖縄コンベンションセンター(沖縄県宜野湾市)
    • 年月日
      20081204-06
  • [学会発表] マウスICSI法に潜む構造的染色体異常のリスク因子2008

    • 著者名/発表者名
      立野裕幸
    • 学会等名
      第10回RMB(生殖医学・生物学)研究会シンポジウム
    • 発表場所
      持田製薬ルークホール(東京都新宿区)
    • 年月日
      2008-07-26

URL: 

公開日: 2010-06-11   更新日: 2016-04-21  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi