研究概要 |
(研究目的)近年、マウスHop2, Cdk2及びMeisez遺伝子のノックアウトマウスが報告された。これらのマウスは全て生殖能力を全く有していなかった。詳細な解析の結果、これらのマウス全てが精子形成過程における減数分裂異常に起因する無精子症を呈することが判明した。そこで我々はこれら3つの遺伝子がヒトでもヒト無精子症の原因遺伝子となりうるのではないかとの仮説をもとに解析を行った。(研究方法)対象となる患者はアメリカ人、イスラエル人及び日本人の計55名である。すべての患者及び正常コントロール群は文章によるインフォームドコンセントを得た後に血液からDNAを抽出し、また大学の倫理委員会の承認を得た後に解析が開始された。3つの遺伝子におげる全てのcoding regionにおいてmutation解析を施行した.(研究結果)解析の結果,coding region内においてヒトHOP2遺伝子で1箇所、CDK2遺伝子で1箇所さらに、MEISEZ遺伝子で計3箇所のsingle nucleotide polymorphism(SNP)を検出した。これらのSNPにおいて正常コントロール群とそのアレル、ゲノタイプの出現頻度を比較検討したところ、HOP2及びCDK2遺伝子では患者群とコントロール群で有意な差を認めなかった。しかしながら、ヒトMEISEZ遺伝子においては今回検出された3つのSNPのうちその2箇所において患者群とコントロール群でそのアレルおよびゲノタイプの出現頻度において統計学的な有意差を認めた(p〈0.05)。(考察及び結論)本研究により、ヒトMEISEZ遺伝子がヒト無精子症特にその精子形成過程における減数分裂に関与していることが示唆された。
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