精子の形態を約6000倍という高倍率で観察・選別し顕微授精に用いることで、妊娠率、着床率が有意に向上することが報告されている。この手法(Intracytoplasmic morphologically selected sperm injection : IMSI)に関するこれまでの報告は頭部の形態評価に関するものだが、本研究では精子中片部形態を評価した。 IMSIを用いて、ヒト精子を中片部が真直ぐなもの(Group 1)、頚部が太くなっているもの(Group 2)、その他の3群に分類し、Group 1とGroup 2のウシ卵子内における精子星状体形成率を比較した。通常顕微受精の倍率(400倍)で形態良好精子と判断したものをコントロールとした。ヒト精子は十分なインフォームドコンセントの上で使用した。 コントロールに占めるGroup 1、Group 2精子の割合は、ともに10-20%と低率であった。精子星状体形成率はGroup 1精子が80.5%、Group 2精子が33.3%でありGroup 1精子が有意に高率であった。コントロールの精子星状体形成率(69.6%)と比較すると、Group 1は高率な傾向にあり、Group 2は有意に低い結果であった。 精子中片部に形態異常を伴う奇形精子では精子中心体機能の低下、すなわち精子星状体機能不全が報告されている。このことは精子中片部形態が精子中心体機能と大きく関与していることを示している。加えて本研究の結果から、IMSIにより通常の倍率では観察困難な精子中心体形態を評価・分類することにより、精子中心体機能良好な精子、すなわち精子星状体形成良好な精子を選別できる可能性が示された。
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