[目的]子宮頸管熟化現象は分娩の中心をなす生理的炎症と捉えることができる興味深い現象である。頸管熟化の最初の過程には胎児因子、胎盤因子、羊水因子、物理的刺激因子など複数の頸管熟化の誘引となる因子が関与することが考えられている。PGE2サブタイプ受容体EP4の発現が十分でない非妊家兎子宮頚管においてEP4に対する選択的合成刺激物質により頸管が熟化されることから、EP4に対する刺激自身によるautocrine/paracrineとしての促進機序が推測される。またピアルロナンーCD44系による子宮頚管熟化機序とPG受容体間の情報伝達の機序などが推定されるが明確でない。そこで本研究では分娩過程における劇的現象のひとつである子宮頚管熟化について、EP4を介した子宮頚管熟化にピアルロナン受容体であるCD44発現を介した制御機構の検討を目的として検討を行った。[方法]1) 非妊家兎にLPS膣座剤並びに合成EP4受容体刺激剤含有腔座剤を投与し屠殺ののち子宮頚管部を摘出、凍結切片並びにホルマリン固定切片を作成、免疫組織学的染色法によりCD44の局在を検討した。2) ヒト子宮頸管よりヒト線維芽細胞を既に確立した方法で分離培養し、LPSならびに倉成EP4受容体刺激剤を投与しCD44発現を免疫組織学的染色法およびWestern blot analysisにより検討した。 [成果]1) LPS腔座剤並びに合成EP4受容体刺激剤含有腔座剤投与非妊家兎はvehicle投与非妊家兎と比較してCD44発現が増強していた。2) 培養ヒト線維芽細胞はLPSおよびEP受容体刺激剤投与によりコントロールと比較してCD44発現が増加していた。以上より、PGE2受容体EP4を介した、ピアルロナン受容体であるCD44発現が誘導され、子宮頸管熟化を促進する機序の存在が示唆された。
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