子宮内膜症(内膜症)にともなう「痛み」は腹膜および深部病巣に起因し、女性のQOLを著しく損なう。これに対し内膜症に伴う疼痛には個人差があり客観性に乏しい。近年、末梢の痛みに対する脳の機能的局在の評価法としてPETや機能性MRIなどの脳機能イメージング法が開発されている。それらで得られた最近の知見では、視床・体性感覚野・島皮質・前帯状回などの興奮と痛みの認知との関連が明らかとなってきた。われわれは、脳内血流増加にともなうOxyhemoglobinの変化をとらえる光トポグラフィーを用いて、「局所の痛み」に対する脳内認知を客観的に評価する方法を考案した。 平成19年度は、まず一般婦人ボランティアにおける月経時と非月経時の光トポグラフィーによる脳内血流動態のデータを集積し、そのデータベースを確立した。 その結果、 1)月経困難症を有する被検者は月経時、前頭葉・側頭葉両方に血流増加を認めたが、側頭葉がより有意に血流が増加していた。 2)月経期に鎮痛剤を内服し、痛みが軽減した状態では、前頭葉・側頭葉ともに血流は減少した。 3)同一被検者の非月経期における痛みのない時期では、脳内血流は安定していた。 4)月経困難症のない対照群では、月経時・非月経時ともに前頭葉・側頭葉の血流は安定していた。 以上、月経に関わる脳内認知としては、側頭葉>前頭葉に血流増加があることから同部位で認知されている可能性が高いことが示された。 次年度は、腹腔鏡下手術において腹膜刺激が生じた部位と脳内血流を測定し、子宮・付属器・骨盤腹膜の脳内認知のマッピングに移る予定である。
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