子宮内膜症(内膜症)にともなう「痛み」は腹膜および深部病巣に起因し、月経困難症を主として、排便痛、性交痛、腰痛などの慢性骨盤痛を生じ女性のquality of life(QOL)を著しく損なう。内膜症に伴う疼痛の評価は、主観的な患者の訴えに基づいており、客観性に乏しい。また、内膜症の痛みは月経周期で変化し痛みの部位も多彩であること、長期間の痛みのため精神的要因も加味されていることなど複雑となっている。またmysterious diseaseといわれるように進行期と疼痛の程度は相関しないという特徴を有する。近年、末梢の痛みに対する脳機能イメージング法が多く開発されている。われわれはこれらの方法の中で、脳内血流増加にともなうOxyhemoglobinの変化をとらえる光トポグラフィーを用いて内膜症における痛みの認知を客観的に評価することを本研究の目的とした。 全身麻酔下の腹腔鏡下に内膜症と診断し治療を行った患者に対し、電気メスにて病変を焼灼した際の脳血流分布を測定した。その結果、子宮およびその周辺への電気メスの刺激は、前頭前野に急激な血流増加をもたらした。また右広間膜への刺激は前頭葉左側で、左広間膜への刺激は前頭葉右側で認知していることも明らかとなった。 今回の研究では光トポグラフィー測定端子が少ないため、腹腔内のマッピングまでは出来なかったが、腹腔の痛みを脳で捉えることの可能性が示された。
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