研究概要 |
子宮内膜症は、性成熟期女性の約10%に発生すると推定され、少産・晩婚化に伴って増加傾向にある慢性疾患である。病因は未だ不明であるが、遺伝的要因も一部ではあるがその発生に関与している。我々はすでに、遺伝子多型解析によりエストロゲン・レセプターα、CYP19、PPAR-γ、HLA-Class I (-A,B,-Cw)およびClass II (-DR,-DQB)遺伝子などが疾患感受性遺伝子の候補であることを報告してきた。 そこで、本研究では、子宮内膜症の発生・進展に関連することが示されているサイトカインおよびそのレセプター遺伝子の遺伝子多型を、800名規模の患者一対照研究により集中的に解析することによって、子宮内膜症の発生、進展に関与する遺伝子群を同定することを目的としている。 現在までに腹腔内所見をもとに疾患の有無、合併症、進行度等を詳細に記載した750名分の末梢血DNA検体を得ている。H20年度にはさらに50名以上の検体を採取した。同時に、非子宮内膜症である対照群の患者検体を収集した。また、表現型についても同時に解析を加えるために、末梢血血清および腹水も採取した。 子宮内膜症ではnatural killer (NK)細胞活性の低下が知られている。そこで、そのレセプターであるkiller immunoglobulin-like receptor (KIR)の遺伝子多型について解析した。その結果、NK活性抑制型のKIRが子宮内膜症で多かったことから、従来の結果を支持している。その結果を英文論文として発表した(Am J Reprod Immunol,2007)。この結果をもとに、KIRの表現型について検討を加えており、遺伝子多型の結果と相反しない結果を得ている。今後引き続き遺伝子多型とタンパク発現の関連について検討を加えていく予定である。
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