研究概要 |
平成19年度初頭に大学動物実験室のマウス肝炎ウイルス汚染が発見され、飼育マウスを全頭屠殺した。半年間の観察期間後にもウイルス汚染が検出され、動物実験室閉鎖が長く続いた。そこで、研究方向転換を余儀なくされた。今年度からようやく動物実験が再開でき、遺伝子改変マウス実験を中心に現在まで実験を継続してきた。 (1)抗癌剤による卵巣顆粒膜細胞アポトーシスには、FasL発現とp53発現誘導が関与しているが、BAX,BCL-2,Fas発現は関与しないことを証明した。さらに、アポトーシスシグナルにはdeath-associated protein kinase介在シグナルが重要な役割を担っていることを実証した。 (2)GnRH agonistが、抗癌剤誘発卵巣顆粒膜細胞アポトーシスを阻止しうることを動物実験で実証し、その至適投与方法を決定した。さらに、その作用機序がエストロゲン分泌抑制ではなく、FasL発現抑制によることも証明した。さらに、抗癌剤による卵巣障害をGnRH agonistで予防したマウスが妊娠しても新生児には影響を及ぼさないことも証明した。(3)マウス卵巣器官培養による卵巣細胞傷害実験システムを確立した。 抗癌剤による卵巣顆粒膜細胞アポトーシスにdeath-associated protein kinase介在シグナルが関与していたが、death-associated protein kinaseが卵巣では顆粒膜細胞特異的に発現していることをin situ hybridization法で、世界で初めて組織内局在を証明した。これは、生物学的に異常な胚の受精による生殖を予防するための防衛システムと推察された。
|