研究概要 |
これまで、子宮内膜症および月経困難症の重症度、疼痛の強さを客観的に評価する方法がなく、これを新たに確立するためのシネモードMRIを用いる臨床試験を行った。月経痛の重度症例では、T2協調画像における子宮内膜直下筋層の低信号域の面積が広く、低信号を呈している時間が長かった。月経痛の原因は子宮で産生されるプロスタグランジンやロイコトリエンにより子宮筋が収縮することと考えられている。収縮が強くなると子宮筋に虚血が生じ、月経痛を引き起こすものと考えられた。今回シネモードMRIを施行し、月経困難症症例において虚血になっている部分と時間を同時に確認することができることを明らかにした。また、子宮内膜症の重症度を客観的に評価する血清マーカーとしてのサイトカイン(TNFα、IL2,IL6,IL8)およびオステオポンチンの有用性を検討した。測定したサイトカインでは有用なものはなく、オステオポンチンだけが重症度を反映した有意なものであった。さらに、子宮内膜症や月経困難症の原因となるロイコトリエンを標的としたロイコトリエン拮抗剤とプラセボの無作為二重盲検試験を行い、ロイコトリエン拮抗剤が有意に症状を軽減することを明らかにした。今後、シネモードMRIと血清オステオポンチンによる重症度判定をパラメーターとして、ロイコトリエン拮抗剤や既に私たちが有用性を示したEPAならびにその他の子宮内膜症治療薬の更なる臨床的有用性を検討したい。
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