19年度に行なった研究のうち、前置胎盤における癒着胎盤の術前診断法の確立にむけての臨床的検討では、癒着胎盤のリスク因子である既往帝王切開の前置胎盤症例での超音波所見を検討した。該当する48例(癒着胎盤23例、非癒着胎盤25例)の超音波画像診断所見で、7つの項目について比較検討したところ、胎盤の筋層嵌入像と筋層血流の不連続性を合わせると感度、特異度ともに90%を超えることを明らかにし。この内容については現在論文作成中であり、その一部を学会発表として行なった。母体血液を使用して、生化学的診断法を検討したが、適切な分子を見出すことはできなかった。MRIについては、これまでの報告を超える術前診断成績はえられなかった。 基礎研究である絨毛細胞株の浸潤メカニズムに関する細胞生化学的検討においては、In vivo実験である非癒着胎盤と癒着胎盤例において、子宮および胎盤を同時に摘出した組織標本のTUNEL法による免疫組織染色を行なった。その結果、癒着がなく絨毛細胞と脱落膜が直接接する箇所ではapoptosisが認められないのに対して、平滑筋細胞と接している癒着部位ではapoptosisが認められた。絨毛細胞のマーカーであるCK-7との二重染色を行なったところ、絨毛細胞が平滑筋細胞に対して、apoptosisを誘発していることが、明らかとなった。このメカニズムについては、現在検討中である。Explant cultureを行なったIn vitro検討では、まだ明確な成果として報告できておらず、20年度に引き続き検討を行なう。
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