研究概要 |
精子形成に関与する分子機構を解明する研究過程において、我々は生殖細胞特異的糖タンパク質TEX101を発見した。本分子は高度にN結合型糖付加を受けたGPIアンカー型タンパク質として精母細胞以降の分化した精細胞に発現していることが判明している。しかしその一次構造は既知のタンパク質と相同性がない独特な構造を持っているため、依然その機能は不明である。そこで本研究ではTEX101の機能を解明する目的で、バキュロウイルス発現系を用いて新規単クローン抗体、6002、6035を作製した。ウェスタンブロット解析では,両抗体は還元・非還元下ともTEX101を認識し、またN-グリカナーゼ処理された本分子への反応も観察された。免疫組織化学では,プアン固定切片での反応は精母細胞,精子細胞,精巣精子に認められ,以前の我々の報告と同様であったが,両抗体の凍結切片上での反応は主に精母細胞にのみ認められた。以上の結果より、これらの抗体はジスルフィド結合の関与しないペプチドを認識していることが明らかとなり、またプアン固定切片と凍結切片では染色パターンが異なることから,凍結切片ではこれらの抗原決定部位が共役分子等で掩蔽されていることが推測された。またこれらの抗体に加え、人為的処置なしに長期間飼育したマウス脾細胞より樹立したハイブリドーマから新規抗TEX101抗体Ts4を得た。本抗体は精巣Triton-X 100可溶性画分に抽出されるTEX101を認識することはできたが,細胞外及び水溶性画分にある本分子の検出はできなかった。またN-グリカナーゼ処理された本分子への反応を認めなかった。この結果よりTs4はN型糖鎖を認識しており,さらに本分子のN型糖鎖修飾パターンは細胞膜上とそれ以外の部位で異なることが示唆された。このような分子生物学的多様性は本分子の機能に関係することが推測された。
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