TEX101はuPARスーパーファミリーに属するGPIアンカー型タンパク質である。成熟マウスでは主に減数分裂開始以後の精巣内生殖細胞膜表面に限局発現が見られ、精子形成過程においての関与が示唆されている。この分子は現在では新規の癌-精巣関連抗原としても注目されており、その細胞生物学的機能の解明が期待されるが未だ多くの点が不明である。その機能解析の目的で、我々はこれまでプロテオミクス解析を用いてTEX101の精巣内共役候補分子としてLy6kを同定した。Ly6kはTEX101同様にuPARスーパーファミリーに属するGPIアンカー型タンパク質であるが、特異抗体も作成されていないためその性状はほとんどわかっていない。本研究ではLy6kの組み換えタンパク質をウサギに免疫して特異抗体作成を作製し、それを用いてマウス精巣におけるLy6kの分子性状の解析を行った。 精巣抽出液を用いたウエスタンブロット法で抗Ly6k抗体の反応性を検討すると、Ly6kの予想分子質量17kDaの位置に単一の明瞭なバンドを認めた。この反応性はパラホルムアルデヒド固定凍結精巣切片中の間質細胞では陰性であり精細管内にのみ明瞭に陽性反応が認められた。抗Ly6k及び抗TEX101抗体を用いて精巣抽出液の免疫沈降をしたところ38kDa(抗TEX101抗体反応)と17kDa(抗Ly6k抗体反応)のバンドがそれぞれ検出され、 TEX101とLy6kの精巣内での共役が示唆された。さらに共焦点レーザー顕微鏡及びショ糖密度勾配法による膜タンパク質分画を用いた解析でもTEX101とLy6kの挙動は高い連関を示した。以上の結果から作成した抗Ly6k抗体はLy6k検出プローブとして有用であり、この抗体により精巣内におけるTEX101とLy6kは共役が強く示唆された。今後TEX101及びLy6k遺伝子を培養細胞に導入し、両分子の細胞生物学的な機能を解析する予定である。
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