癌の浸潤・転移といった癌特有の悪性形質の発現には、癌-間質相互作用が重要な役割を果たしており、癌細胞を取り巻く微小環境の分子機構について解析がすすめられている。われわれはBonemorphogenetic protein(BMP)アンタゴニストであるPRDC(Protein related to DAN and cerberus)の腫瘍増殖促進効果を検証することを目的として本研究を行っている。 まず、子宮体癌組織を用いたRT-PCRにおいてPRDCの発現レベルがコントロールに比し高い傾向にあることが示された。さらに、臨床進行期別では、1期・2期に比べ3期・4期で発現レベルが高い傾向にあった。組織型別では、類内膜腺癌に比較して予後不良であることが知られている漿液性腺癌・未分化癌で発現が高かった。なお、PRDCにより作用が拮抗されることが知られているBMP7はmicroarrayを用いた解析により、腫瘍組織の分化度により発現レベルに有意差があることが示された。 また、われわれはin situ hybridizationを用い子宮体癌組織におけるPRDC発現の局在解析を開始しており、癌細胞がみずからPRDCを産生するのか、癌-間質相互作用により癌細胞周囲の間質からPRDCが産生されるのかを検証したいと考えている。 婦人科腫瘍細胞株(子宮体癌)を用いた実験では、PRDC転写産物の発現をRT-PCRを用いて確認した。また、細胞増殖に対するリコンビナントPRDCおよびリコンビナントBMPの影響に関する解析については、MTTアッセイの予備実験を施行中である。 今後はPRDCが癌細胞増殖を促進するのか、PRDCに対するsi-RNAが癌細胞増殖や浸潤を抑制するか否かを明らかにし、PRDCが今後新しい治療の分子標的となり、癌-間質相互作用制御による新しい治療戦略を構築しうるかどうかを検討したいと考えている。
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