研究課題
本年度は、子宮内膜病変局所でのPPAR発現動態と密接な関連を持つ間質細胞に着目した研究をさらにすすめた。すなわち内膜癌局所における微小環境中でのエストロゲン合成・代謝に関わる癌-間質相互作用を探索する目的で、最近開発された微量測定法(LC/MS/MS法)により、癌組織の微小環境をシミュレートした共培養システムでの検討を行い、アロマターゼ活性が、共培養下では単独培養に比して、間質細胞で有意に亢進するのみならず、癌細胞でも同じく有意に亢進していることを明らかとした。また共培養下では単独培養に比して、エストロゲン活性も有意に亢進していた。このことよりアロマターゼに関する癌細胞と間質細胞の作用は、一方的なものではなく、相互作用であり、両者でアロマターゼ活性が亢進して組織全体でのエストロゲン活性の亢進が起こっていることが示唆された。またアロマターゼ阻害剤の投与により、細胞死が促進されたことから、内膜癌でもアロマターゼ阻害剤が治療薬として有効である可能性が示された。また前年度に続き、内膜癌の発症危険因子に関する、メタボリックシンドロームとの関連という視点からの疫学的研究を、日本での症例対照研究で、類内膜腺癌に限定して行った。様々な食品及び嗜好品の摂取頻度に関する検討で、緑茶を毎日4杯以上飲んでいた群は、飲まない群に比べて、内膜癌を発症するリスクが有意に低く、約三分の一程度であることが判明した。すなわち、緑茶摂取頻度が増すほど内膜癌の発症リスクが有意に低下するという量-反応関係が示され、緑茶摂取により、内膜癌発症リスクを軽減できる可能性が示された。最近、緑茶摂取が肥満のリスクを減少させるとのレヴュー報告がなされており(Grove KA et al.J Nutr.2010)、この結果は緑茶摂取がPPAR、さらには内膜癌発症に及ぼす影響という観点からも興味深いと考えられた。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件)
Cancer Sci. 101
ページ: 241-9
Int J Gynecol Cancer 20
ページ: 220-6
Clin Cancer Res. 15
ページ: 6028-34
Cancer Causes Control. 20
ページ: 617-24
Int J Gynecol Cancer 19
ページ: 708-11