研究概要 |
血管新生は固形癌の増殖・転移において不可欠であることが現在までに様々な研究により報告され、証明されてきた。 子宮頸癌患者においても、その局所癌組織では血管新生因子であるvascular endothelial growth factor(VEGF)、thymidine phosphorylase(TP)が高発現していることがそれぞれの免疫組織染色やmRNAの解析によって証明され、報告されてきた。 これら血管新生因子と子宮頸癌の予後にっいての検討は数多くの報告が散見されている。しかし、これら全ての報告は治療前の組織をもちいた組織内血管新生因子発現とその関連因子の解析、または予後との関連をみたものであり、治療中の血管新生因子の動態についての報告は我々が報告した「子宮頸部扁平上皮癌の放射線治療中におけるTP活性の検討」(Cancer Chemother Pharmacol.2004;53(2):151-4.)以外にはみられていない。 今回,我々は子宮頸癌(扁平上皮癌)での癌組織内血管新生因子(TP)の発現を確認するとともに治療経過(放射線療法・化学療法)中のこれら因子の発現の変動を明らかにすることを目的として本検討をおこなう。 具体的には、子宮頸癌放射線治療中に治療前、10Gy、20Gy、30Gy、40Gy照射後における癌組織内血管新生因子の発現を免疫組織染色、ELIZAによる蛋白定量をもちいてその発現強度の変動を確認する。 子宮頸癌の他の癌種との特筆すべき相違点は放射線または抗癌剤での治療経過中において原発巣の変化を直視下に観察可能であり、必要時には生検により組織採取が可能であることである。 この組織採取の方法を用いることにより、in vitroでの治療経過中の血管新生因子およびその関連因子の変動を知ることが可能となる。 現在、血管新生阻害剤による抗腫瘍効果が各方面で明らかになってきており、すでに臨床応用の段階に入っている。VEGFにおいてはbevacizumabが、TPにおいてはdoxyfluridineがすでに臨床応用されている。今回の検討はこれらの抗腫瘍効果の機序を裏付けるとともに、適応や投与時期等を明確にすることが予想される。
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