研究課題/領域番号 |
19591936
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小林 裕明 九州大学, 大学病院, 講師 (70260700)
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研究分担者 |
兼城 英輔 九州大学, 大学病院, 助教 (90423508)
矢幡 秀昭 九州大学, 大学病院, 助教 (30404065)
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キーワード | テーラード化学療法 / がん休眠療 / 進行再発卵巣癌 |
研究概要 |
血管内皮細胞が少量の抗癌剤でも再現性良く障害されることに着目し、抗癌剤を少量頻回持続投与することで軽い副作用のままtumor dormancyに導こうというMetronomic chemotherapyの薬剤耐性卵巣癌に対する有効性を実験動物を用いて検証した。ヒト卵巣がんからpaclitaxel耐性株と感受性対照株を樹立し、これらを担癌させたマウスをpaclitaxel少量分割投与群と高量単回投与群で治療した。感受性対照株由来の腫瘍は、高量単回投与の方が少量分割投与より抗腫瘍効果を発揮した。一方、耐性腫瘍については少量分割投与の方が同じdose intensityにも関わらず腫瘍の増殖速度を緩やかとした。すなわち薬剤耐性腫瘍においてはMetronomic chemotherapyを模倣した少量分割投与の方が軽度の副作用にも関わらずがん休眠状態に導きやすいと考えられた。 次にこのがん休眠療法の臨床効果を検証すべく、施設内倫理委員会で承認を得た臨床計画案に基づくインフォームドコンセントのもと、有効なエビデンスを持つ治療法がない進行再発を対象として、ドセタキセル・イリノテカン併用テーラード化学療法を行なった。前コースの副作用にもとづき薬剤量を個々の症例で増減した。現在までの21例に対してTTP(time to progression)は平均6.6ヶ月で、12カ月を越えるprolonged NCによる長期延命が4症例で得られた。主な有害事象としてはgrade3の好中球減少を2例に認めるのみで、塩酸イリノテカンを使用したにも関わらず下痢は軽度であった。本治療中のQOL評価としてEORTC QLQ-C30の質問表を応用し、同一患者が以前に受けた従来の高用量化学療法と比較したが、殆どの症例で本治療が前治療よりQOLが良好であった。 昨年度および以上の本年度の研究結果から、基礎的にも臨床的にもMetronomic chemotherapyに基づくがん休眠化学療法の有効性が示唆された。
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