研究概要 |
子宮体癌患者は増加傾向にあるが、進行・再発子宮体癌では化学療法の効果は限られ、放射線療法も効果は低く、予後不良であることから、新しい治療法の開発が望まれている。本研究では、子宮体癌における遺伝子異常・シグナル異常に基づいた癌細胞が作り出す免疫抑制機構を解明し、その結果に基づいた新しい治療法開発の可能性を検討した。 9種の子宮体癌細胞株を用いて、IL6、IL10、VEGF、TGFβ1、PD-L1、PD-L2、B7-H4などの免疫抑制分子と、これらを制御するシグナル分子としてβ-catenin、NFκB、ERK、STAT3、AKTなどの発現を調べ、子宮体癌における免疫抑制解除の分子標的の可能性について検討した。子宮体癌ではPTENの不活性化が知られており、Ishikawa, HeclB, HEC108, SNG2株についてPI3K/Aktについて調べると、PTENの不活化によりAktのリン酸化が認められ、PTENの活性化によりAktのリン酸化が抑制され、さらに免疫抑制分子PD-L1とpAktの発現に相関が認められた。このことからpAkt抑制によりPD-L1の発現抑制が可能ではないかと考え、Akt阻害剤であるwortmannin、LY294002を用いて解析を行った。これら阻害剤にていずれの細胞でもpAktは抑制されたが、予想に反してPD-L1の発現に変化が認められなかった。このことより、子宮体癌におけるPD-L1発現はPI3K/Aktではなく、他のシグナルによると考えられた。
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