研究概要 |
卵巣癌においては,HB-EGFによる(1)E-cadherinの発現抑制やILK(Integrin linked kinase)の発現亢進(2)snail-1の発現亢進により,HB-EGFがEpithelial-mesenchymal transition(EMT)を誘導することを明らかにした。HB-EGFの発現亢進が,細胞接着能,浸潤能,血管新生などの悪性形質の獲得を引き起こす。これらの悪性形質獲得には,snail-1が関与する。すなわち,snail-1の発現抑制によりHB-EGFの発現は抑制され卵巣癌細胞の細胞接着能,浸潤能,血管新生を抑制した。また,これらの悪性形質の獲得は,HB-EGF抑制剤CRM197により抑制された。以上の結果から,EMT制御分子であるsnail-1とHB-EGF発現を相互に制御し,卵巣癌の悪性形質の獲得に寄与することを明らかにした。 一方,Outside-Inシグナルである酸化LDLは受容体であるCD36を介してHB-EGFの発現を増強した。また,CD36の発現を抑制することでHB-EGFの発現は減少した。ヒト卵巣癌患者腹水中の酸化LDLは著明に発現が亢進し,卵巣癌組織でのCD36,HB-EGFの発現も亢進している。したがって,卵巣癌標的分子の発現増強には酸化LDL-CD36によるOutside-Inによる発現機構が寄与していることを明らかにしている。現在,HB-EGFによる酸化LDL発現亢進やCD36発現調節に関わるPPAR-γとHB-EGFの発現について解析している。
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