選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)の子宮内膜間質および平滑筋における造腫瘍能の解析を行っていたが、SERMによる細胞の形態学的変化についてまとめActa Cytologicaに掲載待ちである。また、正常子宮内膜、ポリープ、子宮内膜癌、タモキシフェンに関連したポリープ、子宮内膜癌について免疫組織学的な検討を進めている。そのなかでHMG(high mobility group)蛋白質がエストロゲン受容体や腫瘍化に対して重要な役割を果たしている可能性が示唆された。特にSWI/SNFクロマチン再構成複合体の主要な構成単位の一つであり、estrogen receptor(ER)を介し転写を調節することが報告されているBrgl-associated factor 57(BAF57)の蛋白質発現について、子宮内膜癌111例について検討したところBAF57が子宮内膜癌の独立した予後因子であることがわかった。また子宮平滑筋肉腫でも高発現を認めており、今後症例を増加して検討する予定である(2009年4月第61回日本産科婦人科学会で報告予定)。また同様にHMG蛋白質であるmitochondrial transcription factor A(mtTFA)についても検討を加えた。mtTFAはミトコンドリアのDNAの転写活性に関与していると考えられているが、この蛋白も子宮内膜癌の有意な予後因子であった(2009年4月第61回日本産科婦人科学会で報告予定)。このことは子宮内膜の造腫瘍能の形成には、ミトコンドリアの異常が関与している可能性も示唆された。今後はSERMによる造腫瘍能におけるHMG蛋白質の関与についてさらに検討を進めることを予定している。
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