蝸牛神経の高度病変や中枢聴覚路に障害のある高度難聴者には、蝸牛神経核への聴性脳幹インプラントが現在臨床で施行されているが、現在のところ充分な語音明瞭度が得られていないのが現状である。これに代わり、蝸牛神経核より中枢側である下丘への電極インプラント(中脳インプラント)が近年、考案されている。本研究の意義は、下丘が左右近接した部位にあるために同一の手術野で展開できる利点を生かし、従来の人工内耳や聴性脳幹インプラントでは実現困難であった両側への中脳インプラント埋め込みをめざした基礎的知見の構築にある。 上記目的にために、本年度は光学的イメージング法により大脳聴覚野の反応が測定できるシステムを構築した。本システムは大脳に対しては非侵襲的であり、将来、下丘への中脳インプラントが臨床応用される段階でも評価方法として有用であると予想させる。 さらに、本年度は予備実験としてモルモットを用いて下丘に電極を挿入して音刺激に対する反応を観察し、背側から腹側にかけて周波数の層板構造があることを確認した。また、従来、頭蓋骨の薄いマウスを中心に施行されてきた大脳の光学的イメージング法が、主たる実験動物として使用予定のモルモットで可能か、検討した。モルモットはマウスに比べ、頭蓋骨が厚いため、イメージング法は困難とされているが、頭蓋骨をドリルで薄く削ることにより、反応がみられると考えられる。今後、下丘へのインプラント電極の改善をし、本格的な測定が必要である。
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