ステロイドホルモンは臨床的に高い有効性が認められているが、耐性化を示し効果が減弱する症例も少なからず存在し、鼻症状が増悪するだけでなくQOLも低下し患者の日常生活の大きな障害となっている。アレルギー性鼻炎症例における鼻粘膜組織中のステロイド受容体の測定を行った。その結果、アレルギー性鼻炎患者群をステロイド感受性の高い群ではステロイド受容体アルファの発現は認められるものの、ベータ受容体の発現はほとんど認められなかった。一方、ステロイド感受性の低い群ではステロイド受容体アルファとベータの両者の発現が認められたが、ベータ受容体の発現が有意に上昇していた。また、鼻粘膜組織中に浸潤した好酸球やリンパ球の細胞内におけるステロイド受容体の局在について蛍光顕微鏡を用いて検討したところ、細胞質と核内の両者に認められた。さらにNF-kBの発現についても同様の検討を行った結果、ステロイド感受性とNF-kBの発現との間に有意な相関は認められなかった。以上のことから、ステロイド耐性化は、NF-kBの過剰発現によるものではなく、ステロイド受容体ベータの発現が関与している可能性が示唆された。ステロイドベータ受容体はドミナントネガティブにアルファ受容体がステロイドホルモンと結合することを阻害することによって、ステロイド耐性化を誘導すると考えられた。さらに、ベータ受容体の発現が多い症例では、鼻粘膜におけるTRFとIL-6などの炎症性サイトカインが多く認められ、これらサイトカインがベータ受容体の誘導に重要な役割を果たしている可能性が示唆されると考えられた。耐性化機構にかかわるステロイド受容体βやNFkBの発現を抑制することによって、ステロイド耐性化を回避しアレルギー性鼻炎の治療効果を高めるだけでなく、高濃度のステロイドによって懸念される副作用軽減にもつながると考えられる。
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