研究概要 |
Wriggle Mouse Sagami(Wri)は、Atp2b2を原因遺伝子とする難聴・平衡障害マウスである。本年度の研究成果として、ヘテロ接合体(BALB-Atp2b2 wri/+)の聴性脳幹反応(ABR)検出閾値を5-10匹のマウスを用いて詳細に検討した。生後21日の時点で、平均ABR検出閾値は8kHz短音刺激時に92dBであったが、16kHz、32kHz短音刺激時は各々70、76dBであった。生後28日には、16kHz、32kHz短音刺激時の平均ABR検出閾値は、各々80、90dBまで上昇した。その後7日ごとに経時的変化を測定したが、平均ABR検出閾値は徐々に上昇し、生後49日の段階でABRは無反応となった。 一方、Atp2b2と症候群性遺伝性難聴アッシャー症候群の原因遺伝子であるVlgr1との相互作用の有無を検討した。Wriヘテロ接合体とVlgr1欠失マウスを交配し、それぞれの遺伝子変異をヘテロ接合に有するマウス(Atp2b2 wri/+,Vlgr1+/-)を作成した。本マウスの生後25日目の平均ABR検出閾値は、8kHz、16kHz、32kHz短音刺激時に各々78、65、78dBであり、Wriヘテロ接合体と比較して難聴が悪化することはなかった。Atp2b2とVlgr1の産生タンパクはともに内耳有毛細胞に存在するが、タンパク間の明らかな相互作用は認められないことが示唆された。
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