研究概要 |
本年度は研究計画に従い、基礎的検討として、正常動物でのKlotho、ラミンA、SODの内耳での発現を検討した結果、Klotho、ラミンAは血管条に存在すること、SODは感覚細胞、神経節、水分輸送上皮など広く内耳に分布していることが明らかとなった。また、併せてTRPVの内耳での発現を検討した結果、内耳ではTRPV1,2,3,4のいずれもが存在し、内耳での感覚細胞の興奮伝達や水分輸送に関与すると共に、GMなどによる内耳障害時にはその発現が変化して、めまいや耳鳴りの発現に関係するのみならず、内耳障害保護に働いていることが明らかとなった。さらに抗酸化剤による内耳障害の予防、治療効果についての検討で、抗酸化剤が耳毒性薬剤による内耳障害軽減作用だけでなく、内リンパ水腫の軽減作用を有することも明らかとなった。一方で、病態モデル動物として加齢動物を作製し、来年度の研究に備えると共に、内リンパ水腫だけでなく実際にめまいを生じる新しい動物モデル(メニエール病マウス)を開発した。臨床的検討としては、老人性難聴の患者に対して、抗酸化剤(ビタミンC、レバミピド、α-リポ酸)による治療を行なった結果、少なからぬ治療効果が認められることが明らかとなった。以上の基礎的検討は今回、初めて得られた知見であり、臨床的にもこれまで治療法の存在しなかった老人性難聴に対する治療の可能性を示したことは非常に重要であると考えられた。これらの結果は、第17回日本耳科学会、第66回日本めまい平衡医学会で発表されたと同時に、5編の論文にまとめられた。
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