本年度は研究計画に従い、基礎的検討として正常動物でTRPチャネルの内耳での発現を検討した結果、内耳では28個全てのTRPチャネルが存在し、内耳での感覚細胞の興奮伝達、水分代謝の恒常性の調節に働くと共に、内耳障害児には内耳障害の保護にも働いていることが明らかとなった。また、老齢動物を用いた検討で老齢動物ではSOD、Klotho蛋白、TRPV5、TRPV6の内耳での発現が低下しフリーラジカルによる障害がきたしやすくなる状況が生じることが明らかとなった。また、一方で、病態モデル動物として内リンパ水腫だけでなく実際にめまいを生じる新しい動物モデル(メニエール病マウス)を開発し、めまい発作の発症機序を明らかにした。臨床的検討としては、高齢者のめまいの特徴を明らかにすると共に、老人性難聴の患者に対して、抗酸化剤に抗酸化剤(ビタミンC、レバミピド、α-リポ酸)による治療を行なった結果、少なからぬ治療効果が認められることが明らかとなった。以上の基礎的検討は今回、初めて得られた知見であり、臨床的にもこれまで治療法の存在しなかった老人性難聴に対する治療の可能性を示したことは非常に重要であると考えられた。これらの結果は、 XXV Barany Society Meeting、第109回日本耳鼻咽喉科学会、第8回日本抗加齢医学会、第18回日本耳科学会、第67回日本めまい平衡医学会で発表されたと同時に、7編の論文にまとめられた。
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