研究の目的は、ミトコンドリアを保護することを作用機序とした内耳保護療法の可能性を明らかにし、将来的に臨床応用につながる研究を行うことである。そのため申請者は、研究期間内の、内耳障害においてミトコンドリアのシグナル伝達がどのような役割を持つのかを明らかにしたい。本年度は、卵形嚢の器官培養を用いて実験を行った。ネオマイシンの存在下で培養を行うと感覚細胞のみに細胞死を認める。培地中にミトコンドリアにおいて作用する分子を溶解させることで、細胞死の程度に影響が見られた。中でもBcl-xlは、有意に細胞死を抑制させた。これらの結果より、ミトコンドリアにおけるシグナル伝達分子が、有毛細胞死にも強く影響していることが示された。さらに、これらの分子と相互作用を持つ熱ショック蛋白質の細胞死への影響を明らかにした。これらの結果は学会で報告済みであるが、現在、海外論文にも投稿中である。
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