近年、メニエール病の原因として抗利尿ホルモン-アクアポリン2系の関与を示唆する報告がなされている。動物実験では、抗利尿ホルモン投与により、モルモットに内リンパ水腫が形成される。しかし、これまでに、内リンパ水腫モデル動物を用いた前庭機能に関する研究は少ない。今回、内リンパ水腫モデル動物における前庭機能と組織学的変化を検討したので報告する。 方法は、有色モルモット16匹を用い、内リンパ管および嚢閉塞術を行った動物11匹とシャム手術を行った動物5匹の2群とした。内リンパ管および嚢閉塞術は、全身麻酔下に後頭蓋窩を開放し内リンパ嚢を露出し電気凝固したのち、歯科用リーマーにて内リンパ管まで閉塞を行った。シャム手術は、同様の手術において内リンパ嚢を露出するにとどめた。各動物は術前、術後1から8週まで自発眼振の有無を観察した。眼振の測定は、暗所において赤外線CCDカメラシステムを用いて行った。 結果は、内リンパ管および嚢閉塞術を行った動物において術後1週目から自発眼振を認める動物が出現した。2週目以降で自発眼振を認める動物の割合が増加した。シャム手術を行った動物では、自発眼振は認められなかった。組織学的検討において、眼振を認めた動物の内耳に、内リンパ水腫が認められた。これらの結果から、内リンパ水腫形成時期にめまい発作が誘発されていると考えられた。メニエール病の病理組織学的特徴である内リンパ水腫とめまい発作との関連を支持する研究結果であった。
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